冷たい舌

 幾ら形式嫌いの透子とは言え、神に仕える彼女がそう言うのを意外に思いながら、春日は目の前の銅鏡を見た。

 この御神体は、裏に龍が刻まれた白銅鏡だが、あまり古くはない。

 透子はそれを見つめ、笑いもせずに言った。

「春日さん。なんで、この御神体は鏡なんだと思います?」

「え?」

 透子は鏡を覗き込むようにして言った。

「鏡には自分の顔が映るからです。
 神はそれを覗き込むすべての人の心の中に居る。

 いつでもお前を見張っているぞと―

 脅しているんですよ、春日さん」

 微かに口の端をあげた透子の顔に、春日は、ぞくりとした。

 いつも自分が見ている彼女とは違い、魔的な美しさがあった。

 普段は感じない匂うような色香を感じる。

 これが本当の透子なのかもしれないと何故か思った。

 そのとき― パンッ、と音がして、いきなり鏡が割れた。

 透子の手には何の力も加わったようには見えなかったのに。