冷たい舌

 

 
 拝殿で、一通りの道具を拝見したあと、春日は祭壇に目を向けた。

 中央に据えられているのは、かなり大きな銅鏡だ。

 後ろに木の窓があり、そこが開けられている。

 銅鏡は今日は斜め後ろ向いて置かれていた。
 鏡は眩しい外の景色を映している。

 目を細めてみると、そこには、四角く切り取られた神護山が見えていた。

 鮮やかな緑。

「此処には本殿はなく、御神体は龍神ヶ淵ですよね?

 社殿というものが出来てから取られた、一番古い自然崇拝の神社の形態、そのものですね」

 日本では、もともとは社殿などなく、山なら山、滝なら滝が、神社そのものだったようだ。

 そうです、と透子は頷く。

「そして、その御神体の姿を映すことで、これが神の仮の宿りとなるわけです」
と透子は近づき鏡を下ろした。

 重そうだったが、それより気になることがあって、手を貸すことを躊躇う。

「いいんですか、触っても」

 いいんです、と透子は言い切る。

「こんなもの所詮、ただの形ですから」