冷たい舌

 



 春日は、透子に案内され、拝殿に行く途中、作りかけの舞台に目を留めた。

「これって、神楽殿ですか?」
「ああそう、うちは常設じゃないですから」

 氏子らしい大工たちが仮の舞台を組み立てていた。

 透子は彼らに頭を下げたあと、舞台の前へ行く。

 春日が、
「神楽って、もともとは客に背を向けて踊ってたんですよね」
と言うと、そうですよ、と透子は微笑んで返した。

「本来は、神に向かって舞うものですからね。
 客は、ただ、その背を見るだけ。

 今では……ただのショーですけど」

 何か含むところがあるように、透子は言った。

 その目が何処を見ているのか、春日にはわからない。

 彼女を人でなく見せているのは、この瞳だ。

 一体、何が見えているのだろう。

 何か人とはまったく違う信念に基づいて生きているようなその目に、つい、魅了される。

 透子は自分のことを、その解釈の違いから気になると言ったが、透子こそが何もかも、人と違っているように見えた。