冷たい舌

「これだけのことをして、これだけのものを捧げたんだから、願いを聞き届けてくれるはずだっていうのは、人間の勝手な思い込みでしょう?

 神様にそんな義理はないですよ」
と言うと、春日は笑った。

「確かにそうですね。それで叶えられなければ、すぐに逆恨みして、神も仏もないと思うのは人間の悪い癖だ。

 いやそれにしても、貴方と話していると、本当に人と話している気がしないんですけど……」

「……それもどうですかね」

「それにしても、今日の透子さん、いつもと違うような」

 そうですか? と小首を傾げる。

 自分では自分の変化がわからなかった。

 だが、それは着実にもうそこまで来ていた。

「それで、今日はどうされたんですか?」

「儂(わし)が呼んだんじゃ」

 拝殿の方から公人が姿を見せる。

「おじいちゃんが?」

「いやなに、春日さんは透子より古道具にうるさそうじゃから、ちょっとうちの道具を見せてやろうかと思っての。

 祭りのついでに他の道具も虫干しするから」

 お気遣い、ありがとうございます、と春日は丁寧に頭を下げた。