冷たい舌

 今、自分がしようとしていることの意味を、その罪の重さを、もう一度、自らに含ませるように唾を飲み込んだ。

 障子の桟に手をかけ、縁側に立つと、煌々とした白い満月が目に飛び込む。

 その輝きが、汚れを知ったばかりのその身を照らした。

 明るすぎる月がまるで自分の味方をするように辺りを照らしてくれている気がして、透子は笑った。

 そんなはずはない。

 自分はこれから神を裏切るのだ。

 この世界を作り、守っているもの。

 神と自然と―

  人がそれらを敬うことでこの世に生じたと言われる龍神を。

 透子は、ぐっと柄(つか)を握りしめる。

 今まで、龍神を、この青龍神社を、龍造寺を守り続けてきた先祖の念を抱き壊そうとするように。

 巫女として生きてきた私が、地に堕ちようとも。

 和尚だけは、渡さない!

 透子は月さえも照らし出せない闇に覆われ始めた淵へと向かい、駆け出した。