冷たい舌

 透子は目の前の、薫子が置いていった白い布にくるまれた懐剣を見つめる。

 今はこんな形をとってはいるが、かつては見事な一振りの剣だったと言われている―

 『八坂の剣(つるぎ)』

 龍神がまだ荒神(あらがみ)だったころ、退治されたときに、その腹から出てきたと言われる剣。

 この世でただひとつの―

 龍神を殺せる剣。

 透子はその布を落とした。

 見事な龍の細工が施された白い鞘が現れる。

 鞘から引き抜くと、白銀の刀身が姿を現した。

 月の光が、その刀に香り立つような輝きを走らせる。

 その刃先は熱田神宮に祀られる草薙の剣― 天の叢雲(あめのむらくも)と同じく、真っ直ぐな諸刃になっていた。

 白い小袖に緋袴。

 立ち上がった透子は思う。

 私は今、神に遣えるもののふりをしながら、神を殺しに行こうとしている。

 あれほど、敬った龍神を―