冷たい舌

 

 来た、と薫子が言った。

 彼女の前に正座していた透子は顔を上げた。

 感じる。

 自分を引き寄せようとする強い力。

 まるで淵の水へと自分を返そうとするかのような。

『全てはお前の撒いた種。
 自分で好きなように刈り取るがよかろう』

 傍観を決め込む薫子は透子の前を去った。

 青白い障子の向こうには、庭の影。
 それだけ。

 だが、透子には聞こえた。

 八坂を揺るがす龍王の叫びが。

 裏切りの巫女を、彼は許さない。

 淵が鳴動するのを感じた。

 私の命を取り上げたければ、取り上げればいい。

 すべては私の罪だから。

 でも……。