冷たい舌

「貴方がどう思っていようと関係ないわ。

 龍神の巫女でない私は、この世に存在しないのよ。

 それから―

 龍神様は何も許してなどくれないわ。

 きっと……これから先も私を許しはしない」

「透子?」

 言葉の意味を掴みかね、立ち尽くす忠尚の肩を、公人が叩いた。

「もう出なさい。
 通し稽古をするから」

 忠尚は出ていく直前、透子を振り返ったが、透子は彼を見ることが出来なかった。

 忠尚に腹を立てたわけではない。

 彼の言葉のひとつひとつが、透子がいつも心の内に隠している浅ましい真実を突いていたから。

「龍神様……」

 透子は唇を噛み締める。

 龍神様

  龍神様 龍神様……っ!

 祖父が居るのも構わずに、透子は己れの神の名を呼んだ。