冷たい舌

「いや、透子!
 俺は別に」

 透子は襟元を奇麗に正しながら素っ気なく言った。

「別にいいけど。
 妙な騒ぎだけは起こさないでよね。

 幼なじみに、刃傷沙汰の末に死なれでもしたら、情けないから」

 その言葉にむっとしたように忠尚は言い返す。

「お前、人のこと言えんのか?
 昨日、和尚と此処で何してたんだよ」

 はっと透子は顔を上げる。

「見たんだ……俺。
 和尚には言わなかったけど」

 罰悪く目を逸らし、忠尚は呟く。

 公人は、ほほう、と透子を見下ろす。

「お前ら偽装結婚とか言いながら、ちゃんとやることやってんじゃねーか!」

「ちょっと、そういう言い方ないでしょっ?

 だいたい、なに。
 それで私、あんたに迷惑かけた!?」

 立ち上がる透子の頭飾りにぶつかりかけて、公人が慌てて避ける。

 自分でも、どうしようもない開き直りだとわかってはいたが。