冷たい舌

「どうぞ」

 自分ひとりで着られるところまで着て、障子の向こうに呼びかける。

 だが、障子が開いて入ってきたのは公人だけではなかった。

 忠尚も一緒だった。

 しかし、忠尚は敷居の手前で立ち尽くしている。

「忠尚?」
 透子がその名を呼ぶと、ようやく口を開いた。

「すまん。
 いや、その……」

 そんな忠尚を見ていた公人が、にたりと笑う。

「奇麗じゃろう、忠尚。
 今まで遠目でしか見たことがなかったんじゃろうが」

 からかう公人に、忠尚はいつものように素早い反応を返さない。

「見物料に、そのDVD。
 龍也に返す前に、わしに貸せ」

 調子に乗った公人の言葉に、透子は目敏く忠尚の持っている紙袋を見咎めた。

 その姿に似つかわしくない腕組みをして透子は言う。

「あ、ふうん。
 それ、返しにきたんだ?」

 つい冷たくなる口調に、忠尚は慌てて、それを後ろに隠した。