冷たい舌

 透子は衣装から手を放し、溜息をついた。

 ぱさりと落ちたそれは、幾ら豪華でも清めてあっても、唯の着物に見えた。

 これに袖を通すのが厭だと思うのは、自分の心が疚しいから―

 ぼんやりと床に広がるそれを見つめていると、障子の向こうから公人の声がした。

「透子、まだか?」
「待って。もう少し」

 慌てて朱金に彩られた装束に手を伸ばす。

 そして覚悟を決めて、袖を通した。

 美しいが、冷たいその肌触りは、あの日触れた、龍の舌のようだ―


 
 
 永遠に―

  私を搦めとり……逃がさない。