冷たい舌

 

 
 透子は拝殿に入ると、柱に背を預けた。

 視線を中央に向ける。

 そこに祀ってあるのは、金属であつらえられた丸い大きな鏡。

 龍神の姿を映すと言われる御神体のひとつだ。

 透子は、それをぼんやり見たまま呟くように言った。

「……お祖母ちゃん」

 もう淵は限界だ。

 やっぱり、あの夢は―

 俯きかけたその顔を、もう一度上げたとき、透子は磨き上げられた鏡が、滴る血のように紅く染まっているのを見た。

「きゃっ」

 口許を覆い、座り込む。

 高く掲げられた紅い鏡は、まるで、あの夢の月のように不気味に輝いていた。