冷たい舌

「だって、いい人だよ、春日さんて。
 またお話しましょうねって言うから、はいって」

 公人はどっと疲れが出たように年季の入った竹箒に縋る。

 お祖父ちゃん? と首を傾げる孫娘を怒鳴りつけた。

「お前とお友だちになりましょうなんて男がおるかっ。

 お前の鈍さは仕方ないとしても、和尚は何しとったんじゃ! 和尚はっ」

「和尚?
 なんでそこに和尚が出てくるのよ」

 孫娘の言葉など聞く気もなく、公人は徘徊するボケ老人のようにぐるぐる回り出す。

「儂はあれを婿にとって、此処を継がせると決めとるんじゃ。
 あれにもよく言い含めてある」

 言い含めてあるってことは、本人にも言ったわけ!?

 足を止めた公人は、透子を振り返って眉尻を上げる。

「なんじゃ透子。不満なのか?
 仲いいじゃないか、お前たち」

 お祖父ちゃん、と透子は片頬に手をやり、溜息まじりに言った。

「私、和尚を恋愛対象として見たことないのよねえ」

 おやそうかい、と公人は小馬鹿にしたように笑う。

「ほんとに一度もなかったかのう、透子」

 なんのこと? と嘯く透子を見上げ、可愛くないのう、と呟く。

「ともかく和尚は関係ないんだから、勝手なこと言わないでよねっ」

 可愛くなくて、結構! と勢いつけて社殿へと向かっていった。