冷たい舌

 透子は気づいていた。

 和尚がお酒も煙草もやらないのも、みんなと遊び歩いたりしないのも、それが彼の主義だから、それだけじゃない。

 そんなことをする体の余裕がないのだ。

 薫子亡き後、ほとんど一人で、この淵を支えてきた和尚の体も精神ももう限界だった。

 そうして、自分はそれを支えてあげることもできないのだ。

 透子は、ぎゅっと和尚を掴む手に、力を込めた。

 俯く透子の顎に和尚の手が触れる。

 いつもとは違う瞳が、透子を見下ろしていた。

「今のお前には何もできない。龍神の力を失ったお前には」

「……和尚」

「帰れ、透子。此処は俺が始末しておく」

 付け入る隙もない和尚の言葉に、透子は仕方なく手を放した。