冷たい舌

「神を殺したのは、私。

 神に仕えるために、生を与えられたくせに、私は私を産み出したものを殺した。

 でも― 許せなかったのよ。

 たったあれだけのことで、貴方をこの世から消そうとした龍神を。

 まるで、穢(けが)れたものみたいに!」

「透子……」

 潔斎中に私に口づけた。だだそれだけのことで―

 許せるはずなどなかった。

 透子は畳の上に座り込み、愛しい男を見上げる。

「何度繰り返しても、私は同じことをするわ。後悔なんて、しない」

 あのとき初潮が来たのも偶然ではないような気がした。

 和尚と触れ合った瞬間、私はもう神に仕えるものではなくなったのだ。

「でもね、和尚。私が何をしようとも、貴方が何をしようとも、この身にかかった呪いは解けることはない。

 私は……永遠に龍神の、この八坂のものなの」

 この身を支配する神が死してなお―

 いえ、だからこそ、私がこの八坂を守らねばならない。

 己れの口から出る言葉に心が引き裂かれそうだった。

 だが、何よりも透子を苦しめたのは、自分を見つめる和尚の目。

 いっそ、辛いのが自分だけだったら。

 いいえ、だけど、私は、この人が自分と同じように苦しみ続けていると知っているからこそ、耐えてこれたのかもしれない。

 ひどい女だ。そう思う。

 それなのに―