冷たい舌

「やめてっ」

「俺が殺したんだ! 十年前、俺はお前の、この八坂の神を殺した!」

 ずっと、口にしないで来たその言葉が、一番言わせたくない人の口からほとばしる。

 違うっ、と透子は激しく首を振った。

「違うわっ。……私が殺したのよ。
 剣を持ち出したのも私。最初に刺したのも私!」

 和尚は透子の手を掴み、無表情に彼女を見下ろす。

「だが、逆鱗に剣を突き立てたのは、俺だ―」

 二人の間に、静寂が訪れる。

 ああ、と透子は吐息を漏らした。

 口に出してしまえば、認めざるを得ない罪。

 私は私の神を殺した。

 私たちは、己れの神を殺した―

 あれほどまでに敬っていたものを。

 私をこの世に造り出したものを。