冷たい舌

 


 こざっぱりとした林に囲まれた青龍神社。白く太陽に輝く石段を上ると、聳え立つ石の鳥居が迎えてくれる。

「ただいま、お祖父(じい)ちゃん」

 大きな鳥居を潜ると、境内を掃き清めていた祖父、公人(こうじん)が顔を上げる。

 公人は、最近ではすっかり穏やかになった目を皺の間に埋もれさせて手を止めた。

「おお、お帰り透子。
 見合い相手は蹴散らしてきたか?」

「蹴散らすって程のもんでもないよ」

 石畳の周りの白い砂は眩しく夏の初めの光を反射させていて、透子は目をしばたいた。

 境内のあちこちには、樹齢何百年という太い幹を持つ木々が影を落としている。

 公人の居るその巨大な影法師のひとつに入りながら透子は言った。

「向こうも叔父さんに勧められてきただけで、本人、全然その気はなかったんだって」

 それを聞いた公人は、揉み手をせんばかりに喜んでいた。

「それじゃあ、今日でその話は終わりじゃな」

「うん、でもまあ、春日さんとはまた会うけどね」

 待て、と公人は、ストップ! という看板のように、手を突き出した。

「なんでまた、その男と会うんじゃい」