冷たい舌

 

 
 拝殿の横の離れに、薫子の部屋がある。

 生前のまま変わらないその部屋にそっと足を踏み入れた透子は、拝殿側の壁に並ぶ和箪笥の前に立つ。

 右側の箪笥の小引き出しを開け、奥から、白い布に包まれた細長いものを引きずり出す。

 布には白い絹糸で龍の紋様が施してあった。

 ごくり、と唾を飲み込み、布を縛る白い紐に手をかけようとしたとき―

「透子」

 びくりと、それを取り落とす。
 慌てて拾い上げ、引き出しに突っ込んだ。

 障子の向こうに、見慣れた背の高い影が見える。

「なに? 和尚」

 ちょっと間があって、障子が開いた。
 姿を見せた和尚は戸惑うような顔をしていた。

 透子は笑う。

「なんで今ちょっと躊躇(ためら)ったの?」

「いや……。
 此処を開けると、婆が出てきて、また叱り飛ばされるような気がして」

「やっぱり? 私もそうなの」

 笑うと、和尚も笑い返した。

 ほっとした透子に、彼は笑ったまま言った。

「透子―

 今、なに隠した」

 言いながら、その手はもう透子の後ろ、小引き出しの取っ手を掴んでいた。