冷たい舌

「いいから、はい。
 これ、持ってって」

 料理の並んだお盆を持たされ、重くて透子はよろめいた。

「あんた、ほんっとうに役に立たないわね。

 あら、和ちゃん」

 その声に、透子は廊下を振り返る。

 大きく開け放されたガラス戸のところに、いつの間にか和尚が立っていた。

 龍也の後ろ姿を見送っているようだ。

「どうしたんだ、あいつ」

「昨日の続きよ。
 お姉ちゃんべったりなんだから、困っちゃうわ」

 お盆を持って青息吐息の透子が、和尚、いいところに、と言うと、和尚は中に入ってきながら、厭な顔をした。

「お前が、いいところにって言うと、ロクなことがない。

 その科白を使って、俺に用事を頼まなかった試しがないからな」

「馬鹿ね。
 人に用を頼むためにある科白でしょ?」

 持ってとも言わずに、和尚の手に盆をのせた。

「おい……」

 私にはこれがあるの、と透子は麦茶の乗った小さな丸いお盆を持つ。

「行こ。和尚」
とその袖を引いた。

「あら、春日さん、呼ぶんじゃなかったの?」

 その言葉に、即座に和尚が振り返る。

「春日?」