冷たい舌

 潤子は不思議そうに龍也を見る。

「あんた反対なんじゃなかったの?」

 龍也は気を落ち着けるように椅子に座り直し、透子の方を見ずに言った。

「別に反対してるわけじゃねえよ。

 和尚が養子に来るんなら、俺も好きなこと出来るし、それはそれでいいんだよ。

 ただ― ちゃんと手順を踏めって言ってるんだ」

 透子は呆れたように腰に手をやって言った。

「あんた、昨日、和尚が言ったこと、どういう意味に取ったのよ?

 本当に私と和尚との間に疚しいことがあったのなら、龍神様の巫女なんてとっくの昔に降ろされてるはずでしょ?」

「その巫女を降ろすとか降ろさないとかって誰が決めるんだよ。

 死んだ婆ちゃんか?

 淵におわす龍神さまか?

 そんなもん俺には見えないから、そいつが、お前のこと巫女じゃないって言ってても、わかんないねっ」

 ガタッと龍也は立ち上がる。

 そのまま、ソファの上に山積みになっていた教科書と本の山を乱雑に掴むと、ぽかんと見送る透子の前を通り過ぎていった。

「……なんなのよ、あいつ」

 大きなお盆を出しながら、潤子が笑う。

「難しい年頃なのよ」

「お母さん、二十一にもなって、難しいも何もないでしょうが。

 ほんっとに息子には甘いんだから」