冷たい舌

「ああ、あったあったそういえば。
 なに書いたときだっけ」
と忠尚が訊く。

「……『臥龍』」

 ぼそりと和尚が呟いた。

 忠尚はそれを横目で見て言う。

「やだねえ、気のない振りして、ちゃっかり覚えてる辺りが。

 おい、透子のこともそうじゃないのか。
 お前、このまま、本当に結婚しやがったら、ただじゃ置かないぞ」

 和尚は聞いていない。

 三人でいるのに、いつもと違い、ちょっとぎこちない場をほぐすように、透子は伸びをして言った。

「ねえ、喉乾かない?
 なんか持ってこようか」

 それを聞いた和尚は顔を上げ、半眼の目で透子を見た。

「此処にも、じっと出来ない奴が」

 悪かったわねっ、と振り返りながら叫んだ。

「すぐ戻ってくるわよ!
 麦茶でいいわね!?」