冷たい舌

 口を開けて、見上げた忠尚に透子は言った。

「昨日、先生たちが来て貼っていったんですって」

「懐かしいよなあ。
 でも俺、嫌いなんだよね、書道とか」

「忠尚、じっとしてるの苦手だもんね。
 でも、結構うまいじゃない」

「お前よりはな。
 お前は此処の娘のくせに、ズルしても、とても賞もらえそうにもなかったもんな」

「悪かったわね。

 でも、先生は大きくて勢いのあるいい字だって言ってたわよ」

「字が半紙に入りきらない、救いようのない子にはそう言うんだよ。

 子供は褒めて伸ばせっていうだろ」

 下を向いて作業しながら和尚が口を挟んでくる。

「それより、お前ら、手が止まってるじゃないか、上見てて、点検できるのか?」

 珍しく法衣のまま来ていた忠尚は片膝を立てて、顔を扇いだ。

「ああ、やだやだ。爺が居なくて、ゆっくり出来るかと思ったら、此処にも口煩い奴が」

「でも、そういえば、和尚は賞もらったことあったわよね」

 一度だけな、と和尚は素っ気なく言う。