冷たい舌

 
 
「はいはい、逃げないのよ」

「ちくしょうっ。
 なんで俺までっ」

「お前一人が逃げられるわけねえだろが、あの爺から」

 翌朝、透子と和尚に首根っこを捕まれ、忠尚は拝殿の廊下を引きずられていた。

 拝殿にところ狭しと広げられた祭りの小道具に、既にやる気のなさそうな声を上げる。

「えーっ、これ、全部やんの?」

「そうよ。
 だから、逃がさないわよ」

 顔を近づけて透子は睨む。

 倉から出すまでは大河と公人でやったのだが、二人とも別の用事が入っているので、後の点検と掃除は、透子たちに任せようということになったのだ。

 ぶつぶつ言いながらも、和尚を前に逃げられない忠尚は、腰を下ろしてとりあえず手近な箱を開け始める。

 仕事は面倒くさいが、開け放してある広い拝殿には、涼しい山の風が入ってきて心地よい。

 今、壁一面に、小中学生の書が貼ってあった。

 ところどころきちんと止められていない半紙が風に煽られて、はたはたと音を立てる。

 それが風鈴の音のように涼しさを増していた。

 それらは、『龍』にまつわる課題を学年ごとに書かせたもので、細長い色紙の貼ってあるのが賞をとったものだった。