冷たい舌

 一頻り他愛のない話をしたあとで、透子は言った。

「そうだ、春日さん。
 来週からうち、お祭りなんですよ。

 いらっしゃいませんか?」

『でも、僕はもう貴女とは会わない方がいいんじゃないですか』

 遠慮がちに言う春日に透子は笑った。

「そんなこと、うちの人間は誰も気にしません。

 それに―

 もう一度、お会いしたかったんです」

 忠尚たちが居たら、そういう発言をするから誤解されるんだっと叫ぶところだった。

 だが、今の透子にはそんなこと、どうでもよかった。

「ぜひ、いらしてください。出来たら中日に。
 私、神楽を舞いますから」

 風が懐かしい匂いがしていた。

 草の匂い。

 夜の匂い。

 そして、何かが始まる前のような生温い風の肌触り。

 目を閉じてそれを感じる。

 透子はもう一度、瞳を夜風に晒し、夜に染まる境内を見つめた。

 もうすぐ満月―

 何度もそれは訪れるけれど、今度のは、いつもと違うような、そんな気がしていた。