空を見上げたまま透子は、だっておじ様に悪いじゃないのよ、と呟いた。
雲をうっすらと張り巡らしたように空の色が薄くなっている対岸の林の上から、筒鳥(つつどり)が飛び上がる。
鼻先をくすぐるように風に乗った香の匂いがした。
和尚の匂いだなあ、と透子は目を閉じる。木の香りにも似た匂いだった。
「親父も苦労したろうにな」
ふいにした声に、縋ったまま目を開けると、和尚もまた、鳥を目で追っているのか、こちらを見てはいなかった。
「派手なナリしてカウンタックぶっ飛ばす莫迦娘の見合い相手を捜すのは骨が折れたろうに」
なんてこと言いやがる……。
「お前が普通に働いてたら、潤子さんも、あそこまでうるさく言わないんじゃないか?」
「そうかもしれないけど。
そしたら、淵になにかあったとき、駆けつけられないじゃない。
和尚たちと生活時間帯も変わっちゃうしさ。でも、ちゃんと家の仕事も手伝ってるんだけどなー」
「お前んちの親、シビアだからな」
潤子は透子を普通の娘と思いたい気持ちも手伝ってか、普通に就職させ、結婚させようと躍起になっている。
膝を立てて顎を乗せ、淵を見ていると、いじけているように見えたのか、少し優しい声で和尚は言った。
「たまには、何か親孝行でもしてやったらどうだ」
透子は一瞬強く吹いた風にも、凪いだままの淵を見つめて呟いた。
「そうだね。
親不孝な娘だからね」
意味を図りかねたように、和尚がこちらを見る。
雲をうっすらと張り巡らしたように空の色が薄くなっている対岸の林の上から、筒鳥(つつどり)が飛び上がる。
鼻先をくすぐるように風に乗った香の匂いがした。
和尚の匂いだなあ、と透子は目を閉じる。木の香りにも似た匂いだった。
「親父も苦労したろうにな」
ふいにした声に、縋ったまま目を開けると、和尚もまた、鳥を目で追っているのか、こちらを見てはいなかった。
「派手なナリしてカウンタックぶっ飛ばす莫迦娘の見合い相手を捜すのは骨が折れたろうに」
なんてこと言いやがる……。
「お前が普通に働いてたら、潤子さんも、あそこまでうるさく言わないんじゃないか?」
「そうかもしれないけど。
そしたら、淵になにかあったとき、駆けつけられないじゃない。
和尚たちと生活時間帯も変わっちゃうしさ。でも、ちゃんと家の仕事も手伝ってるんだけどなー」
「お前んちの親、シビアだからな」
潤子は透子を普通の娘と思いたい気持ちも手伝ってか、普通に就職させ、結婚させようと躍起になっている。
膝を立てて顎を乗せ、淵を見ていると、いじけているように見えたのか、少し優しい声で和尚は言った。
「たまには、何か親孝行でもしてやったらどうだ」
透子は一瞬強く吹いた風にも、凪いだままの淵を見つめて呟いた。
「そうだね。
親不孝な娘だからね」
意味を図りかねたように、和尚がこちらを見る。



