冷たい舌

 



「透子、なにしてんの。お祖父ちゃん手伝わなくていいの?」

 夕暮れの境内で公人は、そろそろ祭りの下準備をしているらしい。

 布張りのソファに寝転がっていた透子は、雑誌から顔を覗かせる。

 雑誌といっても、その表紙に大きく『奈落』とか書かれている辺りが透子だった。

「今、そういう気分じゃな~い」
「なんじゃい、だれとるのう」

 開け放たれた廊下の向こうから公人の声がする。

 お祖父ちゃん、と身構えたが、公人は、
「じゃあ、明日、和尚と忠尚に手伝ってもらえ」
とあっさり言う。

 ソファの上に座り、透子は問うた。

「なによう、お祖父ちゃん。
 気色の悪い」

 いつもなら、此処で一発、何をふざけとるんじゃ、お前はっ。大事な神事の前にっ、と来るところだからだ。

 公人は、蔵から出してきた埃だらけのダンボールを縁側に置き、

「なぁに、お前がようやく、和尚と結婚して、ここを継いでくれる気になったんじゃからのう」
と笑っている。

「へ。誰がそんなこと言った?」

 お前な、と公人は顔しかめる。