冷たい舌

 目の前に降りてきた大きな手を、え? と見つめる。

 長い間、運動をしていたせいか、和尚よりもしっかりしていて、温かそうな手だった。

「手、繋いで帰ろう?
 子どものときみたいにさ」

 透子は目をしばたいたが、無邪気な忠尚の顔に釣られるように、その手を掴んだ。

 見ための通りのぬくもりを感じる。

 意外にも安心のできる手だった。

 だが、微笑みながらも、透子は違う手を思っていた。

 いつも限界まで力を使い、冷えきっているあの手を―

「透子―」
「んー?」

「ほんとに結婚したりしないよな」
「……そうだね」

 つい淵の方を振り返った透子の目に、大きな白い星が目についた。

 林の斜め上にある一番星。

 あの日よりも白く輝いていた。