冷たい舌

 そっか……それには気づかなかった。

 心の底から悪いと思って幼なじみを見上げる。

 すると忠尚は、これがあのたらしの男と同一人物だとはとても思えないほどの、屈託のない顔で言った。

「なーんてな。俺もよく龍也ハネにしてるから言えた義理じゃないんだけどさ」

「それなんだけど。なんでいつも、龍也だけ外そうとするのよ」

「だって、龍也ズルイじゃないか」
「ズルイ?」

「お前と姉弟でさ」

 いや、今はこれでいいと思ってるんだけど、と忠尚は呟いた。

「お前の兄弟は俺たちだけだと思ってたのに、龍也が生まれてさ。

 ほんとの弟が出来たら、俺たちとは離れちゃうんじゃないかと思って、怖かったんだよ」

「いつの話してんのよ」

「でも、そういうのって、ずっと引っかかってくるもんなの。

 今は別にあいつのこと、嫌いじゃねえけど、やっぱ、ちょっとしたときに出るんだよな。癖っての?

 和尚だって、無意識のうちにハネにしてんじゃん」

 なんだか、いまいち話が掴めなくて、首を傾げる透子に忠尚は笑い、頭の後ろで組んでいた手を下ろして差し出した。