冷たい舌

 夏の日ざしに当てられたのか、踏みしめる林の中の下草まで勢いを増していた。

「忠尚、いつもふいと居なくなるとき、天満さんとこに行ってたの?」

 そうだよ、と忠尚は、ちょっと面白くなさそうに言う。

「みんなにバレバレの俺の隠れ家。

 親父、天満さんの何考えてんのかわかんないところが苦手みたいで、あそこに居ると、あんまり追求されなくていいんだ。

 お前、本当に今まで知らなかったのか」

 うん、と透子は素直に頷く。

「だって、和尚教えてくれないんだもの。あんたも自分で言わないし」

「和尚が言うなっていうから。
 なあ、昔なんかあったのか、天満さんと公人さん」

 そう問われ、答えない透子を忠尚は責めたりはしなかった。

「いや、別に内容はなんでもいいんだけどさ。
 知らないことがやだったんだ。

 和尚とお前は知ってるのに、俺だけ知らないってことが。なんか、ハネにされてるみたいでさ」

「そんなこと。

 たまたま、私と和尚が知る機会があったってだけで。あんまり人に話すようなことでもないし」

「うん。そうなんだろうとは思ってたけど。
 ちょっと― さみしかったかな、やっぱ」

 そう言って、夕陽で影になった林の上に、うっすらと浮かんでいる白い月を見上げていた。