冷たい舌

「そうだよ。
 なんか今朝早かったみたいで」

「早かったってほどでもないんですけど」
と透子は肩をすくめる。

「もしかして、今までも、ふいっと消えたときって、天満さんところに転がり込んでたんですか」

「そうだよ。
 なんだ、知らなかったの?」

 ええ、と透子は頷く。

「だから、僕離れてても、君たちのことはよく知ってるんだよ。

 で?
 和尚と結婚するんだって?」

「そんなことまで知ってるんですか?」

「だって、それが原因で出てきたんでしょ?」

「やっぱ、そうなのかな。仲間外れにされたみたいで、拗ねてんのかしら」

「いや、あのね……透子ちゃん」

 この鈍さは、薫子とは正反対だと思った。

 あの人は、僕の想いを知っていて利用した―

 冗談ですよ、と透子は言う。

「冗談ですよ、そんなの。

 私、昨日うっかり和尚の部屋で寝ちゃって。

 おじさまたちに、やいのやいの言われて、和尚弁解すんの、面倒くさくなっちゃったんですって」

 そんなことを言い、笑っている透子に、意地悪く訊いてみた。

「ほんとにそれだけだと思ってるの?」