冷たい舌

 

 
「和尚ーっ!」

 淵に居た和尚は一目散に駆け込んでくる透子に気づき、顔を上げた。

「なんだ、透子」

「なんだじゃないわよ。
 なんてこと言ってくれたのよっ。

 お陰でうちは大変なんだからっ」

「そりゃあ、悪かったな」

「ちっとも、悪そうじゃな~いっ」
と叫んだ透子は、いつものように突っ込んでこない自分に、

「なんなのよ、その顔」
と言う。

「別に」
「別にって顔じゃないじゃない」

「立場が悪くなったのは、お前だけじゃないぞ。こういうのは、だいたい男が悪いって決め付けられるもんなんだ」

「じゃあ、なんだってあんなこと言ったのよ!?」

 なんであんなこと言ったのよ― だって?

 ほんとこいつだけは、何度殺しても殺したりない。

 透子は腰に手をやり、和尚を見上げる。

「あんたもさー、寺での立場悪くしてまで、あんなこと言わなくても」

「面倒くさくなったんだよ」
「面倒くさい?」

「いろいろ弁解するのが。
 せっかく品行方正で通ってたのに、もったいなかったけどな」

 品行方正? と透子は鼻で嗤う。

 俺の口からその言葉を聞いて、嗤うのはお前くらいだと思った。