冷たい舌

 そのときちょうど龍也がギターケースを抱え、母屋から出てきた。

 だが、透子と目を合わすと、ふいっと顔を逸らしてしまう。

「龍也っ」
「なんでしょう、おねえさま」

 振り返りもせず、足を止めもしない。

 いっつも、透子、透子って、呼び捨てにする癖に~っ。

「気持ち悪いからやめてよねっ」

 龍也は裏の駐車場に向かうと、すぐに乗り込もうとする。

「なんで無視すんのよ」

 運転席に座った龍也は窓を開け、透子を見上げて言った。

「僕の尊敬していた汚れない姉は、今朝死にました。

 自分の巫女がそんなにふしだらじゃ、龍神様もさぞお悲しみだろうよ」

 そんなことを言って、いきなりエンジンをかける。

「危ないぞ、退けよ。
 話は帰ってから聞く。

 今、急いでるんだ」

 そう言うと、激しく車をふかした。

 思わず透子が手を放すと、その隙に車をスタートさせてしまう。

「も、もう~っ!」

 透子は地団駄を踏んでそれを見送った。