冷たい舌

「そしたら、もう見合いを勧められることもないじゃないか」
「そ、それもそうね。―じゃなくてっ」

 ぶすくれて後ろの壁の前にしゃがんでいた忠尚がその台詞を聞き咎めた。

「和尚っ! お前っ」

 振り返った透子は何故か頭を押さえてしゃがみこんでいる忠尚に気がついた。

「どうしたの?」
と問うてみたが、忠尚は声も出さない。

「なにやっとんじゃ、お前等は」
 公人が振り返る。

 和尚は落ち着いた声で言った。

「騒ぎになってすまなかった。でも、別になんでもない。
 この馬鹿がまた、居眠りこいてるうちに朝になっただけだから―」

 他に言い様はないのかと思っていると、

「まあ、勘違いさせたのは悪かった。
 親父に恥をかかせたのも済まなかったと思ってる。

 だから、透子と結婚しようと思うんだが」

 は?

 一瞬、全員が固まった。