冷たい舌

 

 
 ん? 此処は。
 目を覚ました透子は違和感を覚えた。

 自分の布団と違う手触りと匂い。

「おはよう、よく眠れたようだな」
 その声に飛び起きる。

 見ると、既に日の光の射し始めた窓辺に縋り、和尚が不機嫌に見下ろしていた。

「ちょうど起こそうと思っていたところだ。そろそろ坊主どもが起き出すからな」

 ……夕べ、夕べ、えーっと!
と透子は慌てて己れの記憶を辿る。

 そうか、あの夢を見て、つい、和尚のとこに来ちゃったんだ。

 透子は急いで布団から出て三つ指をついた。
「ごめんなさい~。布団占領しちゃって」

 頭の上で、和尚の溜息が聞こえた。
「……他に謝ることはないのか」

 は? と顔を上げようとしたとき、羽織ってきていた薄手のカーディガンを投げつけられた。

「送っていくから、早くしろ。

 親父、年だから、最近、やたら朝が早いんだ。見つかったら、お前、なに言われるか」

 そっとドアを開けた和尚について行こうとしたが、彼は何故かそこで留まった。

 急に止まったので、その背にぶつかり、透子は鼻を押さえる。

「もう~、どうしたの?」
と、つい、その脇から顔を出し、覗いて訊いていた。

 透子の顔面を、和尚が手をやって押し戻そうとしたが、遅かった。