冷たい舌

「透子」
 やさしく和尚は呼びかけてきた。

「なんで―?
 なんで私を責めないの!?

 私は卑怯だわ。すべてを忘れたふりをして、貴方をひとり置き去りにした―!」

 目を開け、叫ぶと、和尚は自分の方が困ったような顔をする。

「俺は、お前がそんな人間だと思ってはいない。
 お前がそうするのなら、何か理由があるはずだ」

 ああ……ほんとにこの人は―

 俯く透子の耳に、和尚の小さな呟きが聞こえてきた。

「……それに透子、お前が此処に来たのは、初めてじゃない」

「え?」
と顔を上げたとき、和尚は目の前で手を払った。

 ふっと意識が遠くなる。

「大丈夫だ。
 ゆっくり眠れ―」

 額に冷たい指先が当たる感触がした。