冷たい舌

 そんな透子の目許を見ていた和尚は、やがて軽く目を閉じて言った。

「まあ― 俺にもよくわからないが、ロクなもんじゃなさそうだな」

「見、見えるの?」
 そう問うてみたが、和尚は答えない。

 彼の肩越しに外を見る。
 薄いカーテンの向こうに、はっきりと月の形が見えた。

 ふいに横を向いたままの和尚が口を開いた。

「夢、見ないようにしてやろうか」

「そんなこと……出来るの?」

「少しの間ならな」
 そう言い、和尚は腰を落とす。

 透子の膝の側に手をつき、額にもう片方の手を伸ばした。

 はっ、と反射的に透子は両手で額を押さえて逃げていた。

 案の定、その仕草に、和尚は眉をひそめる。
 透子は慌てて言い繕った。

「ごっ、ごめん。やっぱいいわ。ほら、逃げ出すのってよくないと思うしっ」

 だが、和尚の視線は額に注がれたままだ。
 逃げようとする透子の手を掴む。