冷たい舌

 


 
「お、お邪魔しますー」

 おずおずと踏み込んだそこは、相変わらず何もない部屋だった。

 月明かりの中に映し出されているのは、ただ、小さな洋服箪笥と文机と本棚。

 ベットもなく、床の上に布団を敷いている。

 MDやDVDの居並ぶ忠尚の部屋とは対称的だった。

 和尚は窓に縋り、
「座れよ。明かりはつけないぞ。向こうから見えるからな」
と言う。

 確かにああ見えて、忠尚は目敏い。

 頷いて、ちょこんと布団の横に腰を下ろした透子を横柄に見下ろす。

「で? どうしたんだ?」

「いやそれがその……ちょっと夢にうなされて」

 落ち着きなく両の指を弄びながら言うと、またか、と和尚は己れの額を指で突いて言った。

 また? と訝しげに見上げた透子に、
「どんな夢なんだ」
と訊く。

 苦笑いした透子を威圧するように見て、和尚は言った。

「まさか人の眠りを妨げておいて、話したくないとか抜かすんじゃないだろうな」

「そのまさかだったりして……はは」

 鋭い眼光から逃げるように後ずさり、布団に手をつく。