冷たい舌

 あまりに近すぎて、忠尚はその一言が言えないでいる。

 今のこの関係を崩すくらいなら、いっそ言わないままがいい。
 そう思う弟の気持ちは和尚にもよくわかった。

 和尚は横から手を出して、ハザードをたいてやる。

「少し避けろよ。後続車に邪魔だろ」

「……お前が触ると壊れるんじゃなかったのか」

「減らず口を叩く元気はあるんだな」
 俯いたままの忠尚に、和尚は言う。

「なんなら運転してやってもいいぞ。
 しないだけで出来るんだからな」

 その言葉に慌てて発進させた忠尚に、少しだけ笑ったが、すぐにその笑みも見えた。

 振り返り、闇夜に聳える白い鳥居を見上げる。