冷たい舌

 


「じゃあ、また来るわ」

 そう言う忠尚に、天満は苦笑いし、
「出来れば、十二時以降はやめてくれよ」
と言った。

 へいへいと出ていく彼の後を、和尚は付いていく。

 透子は一人振り返り頭を下げた。
「お邪魔しました。天満さん」

「その封印。まだ健在なんだね」

 はっ、と透子は額に手をやる。

 天満は表情を緩め、
「別にどうこう言うつもりはないよ。

 今となっては、それも薫子さんが残した数少ない遺産のひとつだからね。

 気が済むまで大事にしてやって」
と伏し目がちに言う。

「おい、透子、早くしろよ」
 塀の向こうから忠尚が呼んだ。

 天満はちょっとだけ笑って手を振る。

 和尚は少し離れた暗闇に立ち止まり、こちらを見ていた。