冷たい舌

 六畳くらいの狭い和室で、畳も壁も古臭かったが、意外に片付いていて、小奇麗だった。

 物珍しげに見回している透子に、天満は言う。

「その辺、適当に座っててよ。

 ポットのお湯切らしちゃってるから、ちょっと待ってて」

 天満は隣の細長い三畳くらいの台所で、やかんに水を張っていた。

 年季の入った色の木の床が、天満が動くたびに、ぎしぎしと音を立てる。

 踏み抜かないのだろうかと不安になって見ていると、ほら、透子、と忠尚が部屋の隅に積み重ねてあったくすんだ座布団を投げてくる。

 忠尚はそのまま、ほらよ、と和尚にも投げつけた。

 和尚は顔をしかめながらも受け止め、
「お前、本当に我が物顔だな。相当入り浸ってんだろ」
と言う。

 忠尚は、今どき見ない丸い卓袱台の上に手を置き、天井を見上げた。

「あー、だって俺、此処落ち着くんだよ。
 この薄汚さといい、古臭さといい」

 向こうから、薄汚くて悪かったね、という天満の声が聞こえてくる。

「別に汚くないじゃない」

「そうじゃなくて、男やもめの、このいい加減な感じがいいんだよ。

 朝、五時に起きろとか、雑巾がけしろとか言われない世界」

 どうせ、起きてこないくせに、と和尚が呟く。

 忠尚は身を乗り出し、台所の天満に向かって叫んだ。

「ねえ、天満さん。俺、此処で雇ってくんない?」

 天満は湧いたやかんを持って来ながら、
「お前を雇うなんて言ったら、兄貴に殺されちゃうよ」
と苦笑いする。