冷たい舌

「ああ、それ。爺と天満さんが仲悪いからだろ。
 そういや、なんであの二人仲悪いんだ」

 振り返って訊いた忠尚に、透子たちは黙り込む。

「……なんなんだよ」

 忠尚が眉をひそめたとき、ちょうどよくドアが開いた。

 アラブ人かと問いたくなるような濃い整った顔の男が顔を覗ける。

「なんだ忠尚。おや透子ちゃん、久しぶり」

 嬉しそうに笑う天満に、
「……俺も居るんだけど」
と和尚が呟いた。

 天満は、相変わらずの怪しい風体で、口髭まで蓄えている。

 胡散臭そうな方が客が有難がるのだといっていたがー

「ちょっと珈琲でも飲ませてよ」
「ああ、いいよ。インスタントでいいかな」

「厭だけど、他にねえんだろ?
 あ、透子は紅茶ね。珈琲飲めないから」

 好き勝手なことを言いながら、忠尚は部屋に上がり込む。

 お邪魔します、と透子は小さく行って、畳の上に足を乗せた。

 お店に来たことはあったが、奥の部屋に入ったのは初めてだった。