冷たい舌

 
 
「だっ、駄目、駄目、駄目ぇっ」
 透子の声が幻想を切り裂いた。

 半泣きの透子が自分を見上げている。

「お前……今のなんだ?」
「しっ、知らないっ」

「知らないわけないだろう?」
「ほんとよっ、初めて見たわ!」

 後ずさった透子は、石の祠の端に足を引っかけた。

 信心深い彼女は、祠に縋るようなことはしなかったので、そのまま奇麗に引っ繰り返る。

「透子っ!」

 慌てて駆け寄った和尚は、草原に倒れる透子を見て、ふいに子供のころ買っていたモルモットのことを思い出した。

 そういえば、足を滑らせて大車輪から落ちたとき、こんなすっ頓狂な顔をしていた。

 和尚は珍しく曇りのない声で高らかに笑い出す。

「はははははは。馬鹿じゃねえ?」

 透子は、むっとしたように見上げて叫んだ。
「誰のせいなのっ!?」

「……俺のせいなのか?」
 心の底から疑問に思って訊いた。