冷たい舌

「私がいつ和尚とべたべたしてたっていうのよ」
「さっきしてただろうが」

「あれはそんなんじゃ」

 透子の弁解を遮るように龍也は言った。

「俺― 昔は、お前は和尚を好きなんだと思ってた。
 だって俺、見ちゃったし」

「み、みみ見たって、なにを?」

 思わず鼻白む透子に、龍也は悪戯を白状する子供みたいに、俯いて言った。

「俺が子供の頃、お前らそこの、祖母ちゃんの部屋の脇の垣根の陰で―」

 は? なんかしたっけ?

「和尚がそこに咲いてた椿の花をとって、お前にやってた。

 そんで、お前、嬉しそうに笑ってたろ。

 それだけだけど、なんかそのとき、子供心に、あ、この二人できてるなって」

 子供が思うな、そんなことーっ。

「俺が和尚を敵視するようになったのは、それからだ。

 こいつは、いつか姉ちゃんを連れ去る奴だって思ったから」

 話が八艘飛びしてる気はするけど、子供のころの龍也がそれだけ自分を慕っていてくれたのかと思うと、それはそれで嬉しい気はした。

 今はクソ生意気なだけだけど―

「お前なら知ってるだろ。和尚は絶対、無意味に自然のものを手折ったりはしないんだ。

 俺が知ってる限りでは、お前に椿をやった。あの一度きりだ」

 思いがけない龍也の洞察力に、透子は驚いていた。