日向くんが、自分が座った席の周りをうろつくわたしの視線を一緒に目で追った。


右隣をちらちら見ているものだから、わたしがそちらに移動したがっていると察したらしい。


「え、ごめん左京さん、俺の隣嫌だった……?」

「えっ、いや、えっと」


嫌ではないんだけどこっち側だと困るっていうかなんていうか。


確かにいつも隣じゃないけど、なんて困る日向くんにうまく言えずに固まると、律儀に待ってもらってしまって。

待ってもらっても全然言葉が出てこなくて。


「日向くんの隣が、いいです」


勢いに任せて言ってから気づく。


……隣がいいじゃなくて、大丈夫だからとか、嫌じゃないよとか、なにかもっと他に言いようがあるでしょうよ。


必然的に相槌が小さくなったわたしに、日向くんは優しく笑った。


「俺も、左京さんの隣がいいよ」


カッ、と再び熱くなる正直な左耳。お願い髪で隠れてて。


嘘だあ、と茶化すようになんとか呟いたわたしはとても頑張ったと思う。


わたしが自分のことを好きだなんて知らない日向くんは、至って普通に頷く。


「ほんとに。塾来たときに左京さん見つけてさ、やったーって思って、急いで隣座りに来たもん」


なんで、そんなこと言うのこのひとはもう……!