支度を済ませて外に出ると、智也がバイクの前を通りすぎた


「これ、美華の車もらったんだけどさ」


そう言って、智也は車高の低いセダン車を指差す



「免許とったんだ..」


「おぅ。誕生日にあわせてな」


車に乗り込む二人



智也の誕生日は、つい最近だった


一緒に夏を過ごしたことのない瑠奈は、智也の誕生日を祝ったことがない



始まりは、夏だったのに




"おめでとう"



その一言も言えないまま..




「初めてだよ」


「え?」


いきなり口を開いた智也に、瑠奈は話がわからず首を傾げる



「女、乗せんの」



そう言った智也は、ミラー越しに少し笑った気がした



「どこ行くの?」


「んー、秘密」


「とか言って、考えてないんでしょ!」


「あ、バレた?笑」




このまま時が、止まればいいのに―




そんなことを思ってしまうほど、付き合ってた頃と変わらない二人が、そこにはいた