「もしもし」


恐る恐る出てみると


「あっ 朱音?」


その声は誠だった。


「番号変わってなくてよかった
あれでも変えてるかと思ってたけど」


いまだに登録してたってこと?
あたしなんて別れた時点で
多少ムカついてたし即消去したのに。


「ああ・・・」


「今ちょっといい?」


「今 大事なお話し中だから
早めなら・・・」


「身体大丈夫?」


痛くて死にそうーーーだけど


「全然大丈夫」と答える。


「それならよかった
どうかと思って」


そんなことで電話してきたの?


「心配しなくてもあたしは
か弱い女じゃないから平気平気
じゃあね」


電話を切ろうとすると


「冷たいなぁ~
これから1週間同じ職場なのにさ」


今なんて言った?
1週間同じ職場と聞こえてきましたけど?


「えっ?」


「知らなかった?
Gスポーツの電気の配線工事
うちの会社が受け合ってんだけど?」


老朽化してる配線の修正工事を
するのは聞いてる
聞いてるけど・・・。


「まぁ オレは作業する立場じゃなくて
監督として行くんだけどな」


マジか・・・。


うん?やりにくい!!!
誠たちの前では奥野さんとは恋人なのに
どうしよう。


奥野さんに言う?
でも 今言ったら誰から電話がかかったか
聞かれるし 誠との関係も知られるし。


知られて困ることはないけど
あのとき【元カレ】だとか
言わなかったから
今さらいうのも変だし。