「偉そうなこと言うよ。ごめんね。だってさ、恋って結構苦しいんだよ。私も結局さ、やっぱり祐樹のことを諦めきれない。毎日が後悔の連続。だからさ、私決めた。今度会ったら絶対、うん、言う。好きだって。海を諦めるなって。」


 何かが違う。どうして違うんだろうか。ずっと感じていた違和感。それが今日分かった気がした。


「だから、ホタル、苦しいのから逃げたら駄目だよ。諦めちゃ駄目。良いじゃない、結果がどうだって。

 いつもいつも、ずっと思い続けて、願い続けて、その苦しんだ日々が後の人生に役立つとか、強くなれたとか、そんなので満足してたら駄目だよ。

 やり切って、いっぱい泣けば良いんだよ。それだけで、なんかさ、願いが叶ったって思えるでしょ。」


 由美子の目の奥に溜まった大粒の涙は、決して流れなかった。その目には空の星が映り、海になった。


 桜はゆっくりと、どこかへ流ていった。