リップグロスの指先で彼の唇に触れる。
柔らかい。
ルージュを塗ったときにも感じたけれど、乾燥気味だ。
普段、手入れをしないのかしら。
肌も髪もキレイなのは、生まれ持った資質?
いちいちうらやましいんだから。
彼は息を止めている。
目を見張ったまま、身動きできずにいる。
ひょうひょうとしているようで、実はピュア。
わたしが近付くと、かすかに目を泳がせたりする。
香水の匂いに慣れないせいだ、と言い訳していた。
グロスを唇の上に伸ばし終わる。
軽く離れて、リップメイクのバランスを見る。
「んー、グロス、載せすぎた? まあ、いいか」
指先をティッシュで拭く。
熟れた林檎の中身みたいなゴールドに、ふと、いたずらを思い付いた。
つややかな蜜は、きっと甘い。
つまみ食いをしてみたい。
「ねえ、Trick or Treat? お菓子をくれなきゃイタズラするわよ」
「そのセリフ、あなたが言いますか? 仮装してるのはぼくなんですが」



