KISS or KISS?―メイクアップ・ハロウィン―



彼が珍しく拗ねた口調で言った。



「最初は来るって話だったじゃないですか」



計算し尽くされた微笑の仮面が崩れてのぞいた正直な表情は、年齢相応に少年っぽい。

そんな顔をすると本当にかわいいのだけれど、そのかわいさを、彼はきっと自覚していない。



「仕事なんだもの、仕方ないでしょ? それに、高校生の集まりに水を差したくないの」



「年齢なんて……」



「そこから先、言ったら殴るわよ?」



彼は唇を尖らせた。

ああ、仕上げをしないといけないんだった。



わたしはポーチからリップグロスを取り出した。

秋色ルージュに似合う大人っぽいゴールド系のリップグロスを指先に載せる。

彼の顔を、再び正面からのぞき込む。



「動いたりしゃべったりしないでね」