取り残されたわたしは、唇に触れた。
グロスが、さっきよりもたくさんくっついている。
「生意気よ、まったく。リップメイク、直さずに行っちゃうし」
胸がくすぐったく高鳴っている。
顔がにやけてしまう。
ダメだ。わたし、本当に彼のことが好きみたい。
気を抜かないようにしなきゃ。彼は賢くて計算が得意なんだから。
わたしを困らせる方程式なんか発見されたら、大変なことになる。
次に会えるのは、いつになるだろう?
またメイクさせてもらえないかしら。
うちのサロンに掲示する冬メイクのモデルにしちゃおうか。
ちょっと先の未来を思い描いて、わたしは小さく笑った。



